「少年行」南條範夫 感想

高杉少年が久坂少年にがっつり初恋して悶々とする話と聞いて!
マンガのシグルイは読んだことがありその原作者さんだったのでさぞ濃厚な危険なやつかと身構えましたが、そんなことなく。
特にグロテスクなこともセクシャルなこともなくひたすら晋作少年が懊悩していました……。いや対久坂(秀三郎)じゃないセクシャルは結構あったけれども。

少年の恋心、とにかく甘い……甘い……とろっとろに陶酔しながら読みました。
少年の羽化する姿はうつくしい……少年愛に触れるとき人はみな詩人になってしまう……トーマの心臓とかそういう系の。歴史ものというより、幕末舞台の青春ものでした。
残りページ少なくなってきたんだけど秀三郎は!?からの切なくて完璧な終わり方、さびしいけど好き……余韻~~!
読み終わってからしばらく放心してました。

夏祭りでの邂逅うっとりしすぎてよだれ出かけた……いやあ奇跡の至福のひとときでしたね……なにあれまぼろし? 奇跡? 夢?
体温も体臭も感じるようで、遠くの喧噪も聞こえてくるようで、少しだけ見える秀三郎の白い顎も目に浮かぶようで。夏の夜の思い出一生ものでしょこんなの……ッ
からの、うっかり袴の紐をほどいちゃうラッキースケベもなにそれそこもっと詳しく!?
水練場でのラッキースケベもよかったね……秀三郎の背面と自分の前面……いやあのほんとに肉体的な欲望はなくてそういう反応になりますかほんとに? 袴と単衣越しの素肌ってそんなこと考えますかほんとに??

秀三郎の美しい描写がとにかく念入りで、晋作フィルターもかかってるんだろうけどひたすらに美しくて読んで耽溺してるだけで幸せでした。
白い肌の下の桜色の血色……けぶるような睫毛の震え……ヒュッ……
完璧な美少年の完璧な美青年への変貌! ヒューッ!
喪服姿で悲嘆に暮れる秀三郎の陰のあるぞっとするほどの美しさを妄想する晋作少年の様子からさらに妄想する読者の姿がそこに。それは見たかったねええ……!

メインコンテンツの晋作少年の懊悩っぷりも、ちょっと待って、といやわかる最高、の間を高速で行き来する感じで。
寝る前の妄想も推しが死んだときの妄想もするよねー! わかるー!
美少年番付!東の横綱!とか脇の匂いには笑い転げたけども。
地の文で4ケタくらい延々秀三郎って呼んでるのに実際に顔を合わせたら久坂呼びなのももうね! もうね~!

勝手に心が出奔して秀三郎を主君として仕えてるって表現も好きだなぁ。
「おれ以外の奴には秀三郎の奴隷にすらなる資格はない」も! もはや振り切ってて最高に好きです。
勝手に浮気されたような気分になって荒れてるのにもにやにやしまくった。
外面はひたすら傲岸不遜でありつつも心は完全に恋の奴隷、すきだ……

秀三郎のシーンでは自分を口説こうとしてる輩を取り巻きがガードしてるところの「涼しい瞳に微笑みを浮かべて仲間の嘘を静かに聞き流している」が最高でした。最高でした。
困惑しつつあしらいつつ高慢な感じもせず優しく凛とした美神……美神ってほんとに書いてあった……ヒューッ!!!

晋作目線だと秀三郎はひたすらミステリアスな歩くイデアルだけど地の文で
「おれを嫌うているのでは→高杉の反論に備えて緊張しているだけ」とか
「あんな憂いた顔をしてどこに行ってしまったのか→早朝にイカを買いに来させられて眠いだけ」って種明かしされてるのもかわいい。
かわいいし晋作フィルターがほんとにもう駄目だもう。恋してるねえ!

これは高杉と久坂でなくてもよかったのでは?ということもなく、傲慢で優秀で頭でっかちで、っていう高杉のキャラは思った以上にすんなり高杉だなあ……ってなれました。
彼の生涯で動機と行動との間にこれほど距離があったことはない、とかもならではな描写だし。
秀三郎が孤児になったり九州行きで距離が開いたり、松陰先生や周布さんとの邂逅でみるみる少年が青年へ成長していったりっていう、時代背景や出来事も綺麗に使ってて本当に世界観に没頭できました。
いったん初恋は終わったけど、その後あんな手紙送るんだな……とか焼き討ち後はふたりきりで飲むんだな……とかも絡めて味わわせていただきます。

プレミア価格ついちゃってたので図書館に頼ったけど、返したくない……。いつかは本棚に加えたい作品です。復刊か電子化しますように!

それでは歌います、ハローマイフレンド、君に恋した夏があったね……

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